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原始銀河の進化を再現〜日経サイエンス2006年6月号より

宇宙誕生から30億年あまりで楕円銀河が出現した

 

 宇宙に散らばる銀河には,私たちの天の川銀河のような渦巻き型のほか,ラグビーボールのような楕円型も数多く存在する。こうした楕円銀河がどのようにして誕生したのか。その新たな手がかりがスーパーコンピューターによる30億年間の宇宙のシミュレーションによって得られた。専修大学の森正夫(もり・まさお)助教授と筑波大学の梅村雅之(うめむら・まさゆき)教授による研究で,シミュレーション画像はNature誌3月30日号の表紙を飾った。
 まず,一辺が約40万光年の広大な仮想空間を用意,宇宙誕生から数億年たったころを想定して,太陽1000億個分の質量のガスや暗黒物質を分布させる。ここから計算を始めると,1億年後にはガスが集まって多数の星ができ,原始銀河が生まれる。その後,大質量星は比較的短期間で大爆発し,吹き飛ばされたガスが四方に拡散して「泡構造」を形成する。さらに3億年ほどたつと,いろいろな場所で発生・膨張してきた泡構造が衝突合体して,より巨大で複雑な泡構造(スーパーバブル)が生まれた。その内部は温度が1000万度以上に達し,紫外線で明るく輝く。
 5億年が過ぎると,スーパーバブルは差し渡し40万光年を超えて膨張・拡散し,10億年後にはバブルは完全に消えて約1万度の高密度のガスと星からなる不規則な形の銀河が残った。星々はその後,互いに重力を及ぼしあって運動し,約30億年後には見慣れた楕円銀河になった。

 

観測結果との類似

 国立天文台のすばる望遠鏡など相次ぐ大型望遠鏡の登場で,100億光年以上も遠方,言い換えれば100億年以上昔の宇宙が観測できるようになり,そうした場所で水素原子が放つ特徴的な光「ライマンアルファ輝線」で明るく輝く天体「ライマンアルファエミッター」が多数発見された。それより少し手前では星形成が活発な銀河「ライマンブレーク銀河」も見つかっている。
 シミュレーションと比較してみると,計算開始から3億年後に出現したスーパーバブルの輝きとその形状はライマンアルファエミッターとほぼ一致し,5億年以降に見られる不規則な形の銀河はライマンブレーク銀河と類似性が高いことがわかった。
 ライマンアルファエミッターもライマンブレーク銀河も詳しい研究はこれからだが,「今回のシミュレーションによって,これら原始天体から楕円銀河に至る進化の道筋が見えてきた」と森助教授は話している。

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