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メタンハイドレート層に未知の微生物群〜日経サイエンス2006年9月号より

地下微生物圏の多様性解明に手がかり

 

深海底下数百mに存在する“燃える氷”メタンハイドレート層の周辺で,未知の微生物群が見つかった。メタンハイドレートの形成と,地下数kmまで広がっている地下微生物圏の多様性の解明につながる成果だ。
国際共同で運用している深海掘削船「ジョイデスレゾリューション」が南米ペルー沖と北米オレゴン沖の水深1000~5000mの深海底を300~500m掘削し,メタンハイドレートを含む堆積層の試料を得た。海洋研究開発機構(JAMSTEC)極限環境生物圏研究センターの稲垣史生(いながき・ふみお)サブリーダーらは,外部の微生物が混入しないよう細心の注意を払って,採取試料に含まれる微生物のDNAを抽出し,その塩基配列を読み出した。
メタンハイドレートはメタン分子と水分子が結びついてできたシャーベット状の物質。太平洋や大西洋の沿岸域の深海底に膨大な量が埋まっている。深海底下数百mくらいまでのメタンハイドレートは,陸域から運ばれた有機物が微生物の活動によってメタンに変わり,それが低温高圧下で水と反応してできる。しかし,具体的にどんな微生物が関連しているのかなど,詳細は不明だ。

 

微生物の生態系に共通性?

今回検出されたDNAは,ペルー沖とオレゴン沖の間で類似性が認められたが,ほとんどは既知の微生物とは系統学的に大きく異なる真正細菌や古細菌だった。なかには南アフリカ金鉱山の地下数千mから検出された古細菌に近いものもあった。これらの古細菌は深海底下50mまでに比較的多く,一方の真正細菌は深さによらず均一に分布していた。
また,南海トラフ(西南日本沖の深い凹み)のメタンハイドレート層で採取された微生物のDNAとも類似性があった。環太平洋のメタンハイドレート層周辺には,似通った微生物生態系が形成されているらしい。ただ,新発見の微生物群がメタン生成の主役となっているかどうかはわからない。少数ながら検出された既知のメタン生成細菌が長時間をかけてメタンを生み出した可能性も考えられる。
深海底では,プレートが生まれる熱水噴出域にメタンハイドレート層とは異なる種類の地下微生物の生態系が存在することがわかってきている。地下生物圏の研究は緒についたばかり。近く本格稼働する地球深部探査船「ちきゅう」での重要テーマにもなっている。

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