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温度で大きさが変わるスマートゲル〜日経サイエンス2006年12月号より

 横浜国立大学大学院の渡辺正義(わたなべ・まさよし)教授らは温度に応じて急激に体積が変化する機能性ゲルを開発した。通常のゲルとは異なり,溶媒として水や有機溶剤ではなくイオン液体を採用したことで,幅広い温度と圧力のもとで使えるようになる。光に応答して焦点距離が合うマイクロレンズや温度を感じて変色する調光窓,ソフトな質感を持つロボットハンドなど,さまざまな応用が期待できる。

 

 ゲルは高分子の3次元網目構造のなかに液体が入り込み,膨潤したものだ。今回のゲルは,レンズなどに使われているポリベンジルメタクリレートという透明性に優れた高分子と,イミダゾリウム系のイオン液体でできている。低温では体積が大きく,高温では小さくなる。その転移温度は100℃付近で,体積は10倍近く変化する。温度によってゲルの内部と外部とで浸透圧の差が生じ,溶媒が出たり入ったりするのだろうと考えられている。

 

 ゲルの体積変化を利用した機能性材料はこれまでも数多く提案されてきたが,溶媒に水や有機溶剤を使っていたため,内部の溶媒が揮発する問題があるほか,使用できる温度範囲が限られていた。例えば水の場合は揮発すると使えなくなるし,温度範囲は0~100℃で,工業用途に利用するのは難しい。

 

 イオン液体はイオンだけでできた“液体の塩”で,燃えない,揮発しない,凍りにくいといった特性がある。これを溶媒に利用したことで,-10~400℃の温度範囲で長期にわたって使えるようになる。イオン液体や高分子の分子デザインを変えることで転移温度を調整することも可能だ。今後はスイッチやセンサーへの応用を目指している。

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