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数理的な結晶〜日経サイエンス2008年5月号より

 ダイヤモンドは稀少な鉱物だが,数学的にも稀少だ。明治大学の数学者である砂田利一(すなだ・としかず,理工学部教授)は,ダイヤモンドの結晶構造には顕著な特徴が2つあると指摘する。「完全対称性」と「等方性」だ。完全対称性は,結晶の構成要素をいかに再配置してもそれ以上には対称性が増えないことを意味し,等方性とは,どの角度から結晶を眺めても同じに見えるということ。
 数学的には無数に存在する結晶構造のうち,ダイヤモンドが備えるこれら2つの特徴を持つ結晶がほかにただ1つあることを砂田は発見,Notices of the American Mathematical Society誌2月号に報告した。ダイヤモンドの結晶構造が六角形の連なりからできているのに対し,この結晶は十角形の集積からなる。
 砂田は当初,この結晶を「K4」と名づけ,初めての発見だと考えていた。しかし,結晶とは別の研究をするなかで「この結晶構造を偶然,数学的に再発見した」ことが判明したという。砂田の論文発表後,複数の化学者と結晶学者が,この結晶が1977年にウェルズ(A. F. Wells)が「(10,3)-a」という名で報告したものと同じであると知らせてくれた。ケイ化ストロンチウム中のシリコン原子の配列は,ダイヤモンドの数学的双子にあたる結晶構造がわずかに歪んだものだ。

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