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クマムシに宇宙服いらず〜日経サイエンス2009年1月号より

 人間が何の保護もなしに宇宙で生きられる時間はわずかだ。すぐに肺のなかの空気が膨張し,血液が泡立ち,口のなかでは唾液が沸騰し始める。対照的に,この過酷な宇宙環境下で何日も生き続けられる体長1.5mmの非常に小さな動物がいる。
 緩歩類という一群の動物で(クマムシとも呼ばれる),海底の堆積物から高山山頂のコケに至るまで世界中の至る所にいる。なかには乾燥に適応して,水分なしで10年間の長きにわたって生き続けられるものもいる。
 軌道上に2007年に打ち上げられた緩歩動物を宇宙の真空状態に10日間さらす実験が行われ,しっかり生き残った。クマムシが落命したのは真空状態でかつ放射線を浴びたときだけで,それでも死亡率はわずか10%。
 生き残ったクマムシはデイノコッカス・ラディオデュランス(Deinococcus radiodurans,「放射線に耐える奇妙な果実」の意)という細菌と同じく,放射線による細胞の損傷を修復する何らかのメカニズムを持っているに違いない。
 この宇宙旅行クマムシをCurrent Biology誌2008年9月9日号に報告した研究者たちは,極端な乾燥状態でも生きられるように適応した他の生物(ワムシや線虫,ブラインシュリンプなど)も緩歩動物と同様に宇宙空間に耐えられるかもしれないとみている。

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