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サマータイムの効果は?〜日経サイエンス2009年5月号より

本当に省エネになるのか,疑問もあるようだ

 

 世界の人々の約1/4が3月のある日から,日光に浴する時間が長くなる代わりに睡眠時間を削られる。サマータイム(夏時間)だ。照明にかかる電力消費を節減できると考えられている。だが,最近の研究がこの省エネ効果に疑問を投げかけた。一部には,むしろ電力消費が増えているとする結果もある。
 夏時間はもともと1784年にフランクリン(Benjamin Franklin)がロウソクを節約するために発案したとされるが,米国が実際に制度化したのは第一次世界大戦の際が初めてで,戦争のために資源を節約するのが目的だった。夏時間の効果に関する初の包括的な調査は米運輸省によって1970年代の石油危機の際に行われ,夏時間導入によって電力消費が約1%減ったことが明らかになった。
 それ以降は調査はほとんど行われず,この間にエアコンや家電製品が広く普及して米国の電力消費パターンは変化したと,カリフォルニア大学サンタバーバラ校の経済学者コチェン(Matthew Kotchen)はいう。だが最近,州や国レベルで夏時間政策を変更したケースがあり,夏時間の影響を前後で比較調査する新たな機会を提供した。

 

制度変更で比較調査

 2006年,インディアナ州は夏時間を初めて州全体で導入した(以前は一部の郡だけだった)。コチェンと共同研究者のグラント(Laura Grant)がこの前後の電力消費と電気代を比較調査した結果,意外にも住宅の電力消費が全体で1%増え,電気代が900万ドル余計にかかったことがわかった。夏時間によって家庭の照明用電力需要は減ったものの,夏の夕方の冷房と,早春・晩秋の朝方の暖房向けに電力需要が増えたとコチェンらはみている。論文は今年中にQuarterly Journal of Economics誌に発表する予定。
 また,2007年に全米規模で夏時間の開始が3週間早まって3月の第3日曜日からとなり,秋の夏時間終了が1週間遅くなったことも,新たな比較材料となった。カリフォルニア州エネルギー委員会のカンデル(Adrienne Kandel)らは,夏時間の期間が延びたのに,同州のエネルギー消費がほぼ変わらなかったことを発見した。0.2%の減少が見られたものの,統計誤差1.5%の範囲内にとどまる。
 最近の調査結果がすべて,夏時間は逆効果だといっているわけでもない。米エネルギー省の上級アナリスト,ダウド(Jeff Dowd)らは夏時間の効果について,1州だけでなく全米のエネルギー消費への影響を調べるため,全国67の電力会社を調べた。
 議会に対する2008年10月の報告書で,夏時間の期間が4週間延びたことによって,全米の電力消費は1日あたり約0.5%,合計で13億kW時の電力が節約されたと彼らは結論づけている。10万世帯の年間電力需要をまかなえる量だ。この調査は一般家庭だけでなく商業用の電力消費も対象に含めたという。
 全米調査と地域調査の差は,州による気候の違いを反映している可能性がある。「エアコンを多用するフロリダ州だったら,夏時間の効果はカリフォルニアよりもさらに悪かったかもしれない」とコチェンはいう。 

 

省エネ以外の得失も

 夏時間がエネルギー浪費になるのなら,廃止すべきでは? 予定が狂うとして以前から反対してきた農家は喜ぶに違いない。だが,廃止の可能性はゼロのようだ。「国民は夏時間制度に慣れてしまっているため,国レベルで制度を変えられるとは思えない」とコチェンはいう。「夏時間について,その他の得失を考えたいところだ」。
 小売業,特にスポーツ用品やレクリエーション用品を扱う店は以前から夏時間期間の延長を強く主張してきた。例えば1986年の議会で,ゴルフ関連業界の代表者は,夏時間期間を1カ月延ばすとゴルフ用品の売り上げやプレー料など,年間で4億ドルの増収になるだろうと述べた。
 だから,家でエアコンの使いすぎを心配するのではなく,日が出ている間に屋外で何ができるか考えてみたらどうだろう。ソフトボールなんていかが?

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