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ブタに感染したエボラウイルス〜日経サイエンス2009年11月号より

悪名高きウイルスの仲間が新たな宿主に拡大

 

 人間には無害なので心配ご無用──ただし,いまのところは。
 フィリピンで飼われている家畜ブタから,エボラウイルス・レストン株が見つかった。致死性の出血熱を引き起こすエボラウイルスの仲間だ。エボラ出血熱は感染性が高く,人間集団に感染した場合の死亡率は90%に上ることもある。これに対し,1989年にバージニア州レストンの研究所でサルから発見されたこのレストン株だけは人間に無害だ。
 2008年7月,フィリピンでブタの「青耳病」を調査するなかで,レストン株の感染が見つかった。青耳病は呼吸器疾患の一種で,酸素不足によって耳が青くなるのでこの名がある。現地からブタの生体組織と血液が米農務省プラムアイランド動物疾病センター(ニューヨーク州)のマッキントッシュ(Michael McIntosh)に送られた。マッキントッシュは検体がレストン株を含んでいるのを発見して驚いた。ブタからの検出は初めてだった。

 

人間にも感染

 研究チームは同ウイルスがブタからヒトへの感染を起こしていることも確認した。血液検査の結果,6人の養豚業者が同ウイルスに対する抗体を持っていたのだ。6人には何の症状もなく,このウイルス株が1989年の発見時と同様,現在も人間には無害であることを示している。マニラの当局は1月に中間経過を公表,マッキントッシュによる詳しい論文がScience誌7月10日号に掲載された。
 このウイルスがどのようにしてブタに感染したのか,青耳病とは別の症状を引き起こすのかなど,未知の点が数多くあるとマッキントッシュはいう。ウイルスがブタ集団に広がる間に変異し,より危険なものに変わる恐れもある。また,致死性のエボラウイルス株にブタが感染する可能性も浮上した格好だ。
 「危険性がどの程度なのか,実のところわからない」とマッキントッシュはいう。「だが,家畜ブタが感染したからには,危険性は高まっている」。

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