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変異コレステロールが認知症を防ぐ〜日経サイエンス2010年5月号より

 コレステロールというと心血管障害との結びつきを連想するが,この脂質が脳の健康に非常に重要であることを示す証拠が増えてきた。なにしろ,体内のコレステロールの1/4が脳にある。最近の研究で,コレステロール粒子の大きさを決める遺伝子によく見られる変異が,認知症の進行を遅らせアルツハイマー病を防いでいることが示された。
 この変異は,コレステロールエステル輸送タンパク質(CETP)を構成しているあるアミノ酸(イソロイシン)が別のアミノ酸(バリン)に置き換わるもの。Journal of the American Medical Association誌オンライン版1月12日号への報告によると,この変異遺伝子を持つ人は「加齢に伴う記憶力の低下が遅い」という。バリンに置き換わるタイプの遺伝子を2つ持つ人は,イソロイシン型の人に比べて認知力の衰えが51%遅く,アルツハイマー病を発症するリスクが70%低かった。
 この結果は予備的なものだし,認知力保護の背景をなす詳しい仕組みは不明だ。だが,同遺伝子は長寿と関係していると以前から考えられており,心臓病患者に役立てることを目的にコレステロールエステル輸送タンパク質の機能を変える薬の開発が進んでいると,研究を主導したアルバート・アインシュタイン医科大学のリプトン(Richard B. Lipton)はいう。そうした薬が,今回のような認知的な改善にもつながる可能性があるとリプトンは期待している。

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