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ニッポンバラタナゴを里山に戻す〜日経サイエンス2010年5月号

かつては西日本のかなりの地域で見られたニッポンバラタナゴ
今や絶滅危惧種となったこの魚を里山に復活させる試みが始まった

 

 近畿大学農学部の北川忠生講師を中心とする研究グループは絶滅危惧種のニッポンバラタナゴ(上の写真)を里山に戻す活動を始めた。第1弾として2月9日,同学部キャンパス(奈良市)に残る里山のため池にオスとメス各10匹を放流した。ニッポンバラタナゴは,かつては近畿以西の本州や四国の瀬戸内海側,九州北部などのため池や水路などで普通に見られる“里山の魚”だった。それが,競合する外来種タイリクバラタナゴの侵入や河川開発,水質悪化のため,今や大阪府や香川県,九州北部などのごく限られた地域にしか生息していない。
 北川講師らの活動の発端は2005年,奈良公園内のとある池でニッポンバラタナゴを発見したこと。以来,北川講師らは,そのニッポンバラタナゴの繁殖に取り組み,数を20匹から約200匹まで増やすことに成功。増やしたニッポンバラタナゴを近隣の里山の池に放流,本来生息していた環境で繁殖させると同時に,環境教育の役立てようというプロジェクトを始めた。里山の池には二枚貝やハゼの仲間などもすんでいて,そうした生態系の中でニッポンバラタナゴも繁殖する。別の見方をすれば,北川さんらの取り組みは,ニッポンバラタナゴが生存できるような里山生態系を回復させるプロジェクトということになる。放流したキャンパス内の池は数十年間,人の手が入っていなかったため,まずは池の底にたまった泥を除去するなど里山環境を復活させるために汗を流した。第2弾としてビオトープ活動に取り組む奈良市内の小学校2校の池にも放流した。バラタナゴの分布域は奈良公園の池の周辺に広がり始めた。 

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