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天文衛星「ひので」太陽極域で強磁場を発見〜日経サイエンス2010年5月号から

「ひので」によって太陽極域の様子が初めて鮮明にとらえられた 

そこでは,これまで考えられなかったような活動が起きていた 

 

 「ひので」は宇宙に浮かぶ大型太陽望遠鏡だ。口径50cmの筒先を調べたい場所に向け,時々刻々変化する太陽表層の様子を,静止画像ではなく動画像としてとらえることができる。2006年9月の打ち上げ以来,数多くの成果をあげているが,3月9日に発表された成果はその中でも重要なものだ。
 今回,「ひので」が筒先を向けたのは太陽の極域。天文衛星は地球近傍にとどまっているので,太陽の低緯度域は正面から見ることができるが,極域は,かなりの斜め方向からしか見ることができない。低緯度域に近い細かさで極域を見るには,非常に角度分解能の高い望遠鏡が必要になる。それを可能にしたのが「ひので」だ(月も同様で,月の極域の詳しい地形がわかったのはつい最近,日本の月探査機「かぐや」が極域の真上を飛んでからのことだ)。

 

 太陽には黒点と呼ばれる,周囲に比べて暗い場所があり,そこには磁力線が集まっているので磁場が非常に強くなっている。黒点は11年周期で太陽の南北両半球の中緯度域から赤道域へと移動,そして再び中緯度域に戻るというパターンを繰り返している。別の言い方をすれば,太陽の極域には黒点はやってこないということだ。実際,これまでの極域観測でも,強い磁場がある場所は確認できず,極域は弱い磁場で埋め尽くされていると考えられていた。ところが,「ひので」による観測で,そうした見方は誤りであることがわかった。
 極域は広い面積で平均してみれば,磁場は弱いことは間違いない。しかし,それは全域が弱い磁場で覆われているためではない。黒点並みの強い磁場を持つ,ただし黒点よりもはるかに面積が小さくて寿命が短い斑点状の領域と,磁場がかなり弱い,それ以外の領域を合わせ見ていたためであることが,「ひので」によって明らかになった。
 「ひので」が発見した極域の強磁場域では,上の観測画像に示すように,磁力線が非常にユニークな形状をしていた。太陽表面では磁力線が集まっているのに(それだから黒点並みの磁場の強さになる),すぐ上空では,磁力線はラッパのように大きく広がっていた。
 このラッパ構造を持つ強い磁場領域の発見によって,太陽にまつわるいくつもの謎を解く手がかりが得られた。
1つは極域で頻発するジェット現象の存在。弱い磁場で覆われていては,ジェットを生み出せないが,ラッパ構造があれば,そこがジェットの噴射口になる。もう1つは黒点の形成に関する謎。黒点の形成には極域の磁場もかかわっているが,その全域が弱い磁場に覆われているとすると,実は黒点はうまく作れない。しかし,極域に強い磁場領域が存在すれば黒点は無理なく生み出せる。「ひので」によって太陽の極域に対する認識が大きく変わり始めた。

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