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絶滅寸前だった初期人類〜日経サイエンス2010年6月号より

そのとき,世界人口はたった5万人ほどだった

 

 100万年前に暮らしていた初期の人類は絶滅寸前だったらしい。古いDNA領域を調べた遺伝学研究によると,ホモ・エレクトスやホモ・エルガスター,原始的ホモ・サピエンスといった初期人類の個体数は多くてもそれぞれ5万5500人だったと考えられる。
 ユタ大学のヒト遺伝学者ジョーデ(Lynn Jorde)らは2人の現代人のゲノムについて「Alu(アル)配列」という“動く配列”を調べて,この結論に至った。Alu配列は短いDNA断片で,ゲノムの複数の領域の間を移動する。この移動はごくまれにしか起こらないので,Alu配列が存在する領域はゲノム中でも相当に古い領域だと考えられる。また,Alu配列を含んでいる古い領域は多くの突然変異を蓄積しているので,これをもとにそのDNA領域の年代を推定することもできる。
 ジョーデらはその後,これら古い領域の配列を2人のゲノムに見られる全般的な多様性と比較し,古代の人口を5万5500人と推定した(集団遺伝学者が実際に計算するのは遺伝的多様性の指標となる「有効集団サイズ」というもので,実際の個体数に比べると一般にずっと小さい。今回の場合,120万年前の人類の有効集団サイズは1万8500人だったが,ジョーデらはこの数字をもとに全人口を推定した)。研究結果は米国科学アカデミー紀要オンライン版1月19日号に掲載。
 こんなに少ないのは驚きだ。というのも,化石記録によるとヒト属のメンバーはアフリカからアジア,ヨーロッパに広まっていたので,個体数も相当に増えていたはずだと思われるからだ。
 ジョーデは当時に人口を抑制するような何らかの大事件が起きたに違いないと考えている。7万年前に人類をほとんど壊滅状態にしたとされるスーパーボルケーノ(超巨大火山)爆発のような出来事だ。「大集団が天変地異による人口の増減を経験してきたように,ごくごく小規模な集団もそうした変化を経てきた」とジョーデはみる。

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