News Scan

コシヒカリの来し方行く末〜2010年8月号より

イネ交配による遺伝子の系譜がゲノム解析で明らかに

 

 日本で最も多く栽培され最も多く食べられているお米,コシヒカリ。品種改良によって交配種からどのように遺伝子が受け継がれて“おいしいお米”になったのか,またコシヒカリから新品種へとどのように伝えられているのか──そうしたコシヒカリの“来し方行く末”が,農業生物資源研究所によるゲノム解析から浮かび上がった。 
 コシヒカリは1956年に品種登録された日本を代表するイネ品種で,どの品種を交配して作られたかなど,その系譜は詳細に記録されている。農業生物資源研究所は今回,コシヒカリのゲノム塩基配列を解読することで,祖先品種から遺伝子がどう受け継がれてきたのかを明らかにした。 
 コシヒカリのDNAを短い断片にして高速装置で塩基配列を読み取り,この情報を2004年に解読されていた「日本晴」の塩基配列と照合することでつなぎ合わせ,ゲノム全体の約80%にあたる3億600万の塩基配列を決定した。両者を比較したところ,約6万7000個の一塩基多型(SNP:同じDNA領域のなかで1カ所だけ塩基が異なっているタイプの変異)が見つかった。うち3352個は遺伝子の内部にあり,両者の特徴の違いをもたらしていると考えられる。 
さらに,これら一塩基多型のなかからゲノム全域に散らばっている1900個余りを選び,「SNPタイピングアレイ」という検出ツールを作った。一塩基多型を含んだ短いDNA断片を小さなビーズや基板に貼り付けたもので,別の品種のDNA試料をここに流すと,同じ多型を持つ断片がくっついて蛍光などを発するようになっている。いわゆるDNAチップのようなもので,変異を一挙に検出できる。 
 イネの品種改良で重要な役割を果たしてきた151品種のDNAをこのツールを使って調べた結果,コシヒカリは「朝日」「亀の尾」「愛国」という100年以上前の有力品種を含む在来6品種からまとまったゲノム領域を受け継いでいることがわかったという。また,コシヒカリから生まれた「ひとめぼれ」「あきたこまち」「ヒノヒカリ」の3品種とコシヒカリが共有しているゲノム領域なども詳しくわかった。
 成果は英国のオンライン科学誌BMC Genomicsに4月27日付けで掲載,5月24日に報道発表された。イネの品種改良をうまく進めていくうえでの基本的情報になると研究チームは期待している。

サイト内の関連記事を読む