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結晶に隠された謎~日経サイエンス2011年8月号より

規則正しい結晶構造がどのように溶けるのか,その謎が解け始めた

 

 小学生が理科の授業で結晶を作るくらいだから,物理学者は当然,これらの美しい構造がどのように形成されどのように溶けるのかを知っていると思うだろう。だが残念ながら,物理学の教科書には結晶の溶解の理論について大きな空白が残っている。「結晶構造が溶解する理由は非常に微妙だ」と独コンスタンツ大学のマレット(Georg Maret)はいう。彼はこの謎を解いた業績で,ドイツ物理学会とフランス物理学会から今年のゲントナー・カストラー賞を授与された。
 この問題が難しいのは,結晶が自ら安定化する性質を持っているからだ。結晶中のある原子が位置を変えると,近隣の原子がそれを元に引き戻そうとする。仮に原子が十分に激しく揺すられて自由になったとしても,行き先があるだろうか? 他の原子が逃げ道をふさいでしまう。結晶が液体に変化するには,まるである種の群知能が働いて,原子をすべて一斉に同期して動かしているようだ。

 

2次元結晶のヘキサティック相
 この謎を解くため,物理学者は2次元結晶という特別なケースについて考えてきた。自然界にそんなものは存在しないが,水面に浮かんだ油膜がそれに近い。1970年代,2次元結晶は3次元結晶よりも基本的に不安定であることが理論的に示された。隣り合う原子の数が少ないので,原子をその場にとどめる力が弱いのだ。また,どれか1つの原子が結晶構造の定位置から離れた場合,立体結晶ではたくさんの原子でできた列が場所をどかなければ原子は自由になれないのに対し,2次元結晶ではたった2?3個が場所を空ければすむ。
 このような幾何学的な理由から,2次元結晶は「ヘキサティック相」という段階を経て溶解するはずだと考えられた。この相では原子が6角形のグループ単位になって液体のように自由に動くのだが,6角形の向きは結晶中のように保たれた状態だ。

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