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福島第1原発廃炉の行方~日経サイエンス2011年8月号より

溶融した核燃料が塊になっているなら解体も難しい

 

 チェルノブイリ原子力発電所の事故から25年たったいまも,発電所の最下層には核燃料の溶融で生じた放射性物質の塊が潜んでおり,大量のコンクリートでこれを覆って作業員や訪問者を危険から守っている。これとは対照的に,ペンシルベニア州ハリスバーグ近郊のスリーマイル島原発の場合,事故から30年以上を経て,炉心の部分溶融を起こした原子炉のすぐ隣りにある2基の炉は現在も運転を続けており,周辺には民家が立ち並ぶ。

 

 一方は遺棄され“墓”となり,他方は運転を続けている。両極端だが,最近に炉心溶融組に加わった東京電力福島第1原発の行く末は両者の中間になるだろう。福島第1原発は6基ある原子炉のうち少なくとも3基が部分的炉心溶融を起こし,7つの使用済み核燃料プールのうち2つでも燃料の溶融が起こっている。「原子炉が損傷した場合,廃炉に向けて2つか3つの方法が容易に考えられる」とエンジニアリング会社CH2Mヒル(コロラド州イングルウッド)の廃炉・解体担当副社長ケーラー(Kurt Kehler)はいう。

 

 福島第1原発の行く末は結局のところ,どれだけ核燃料が溶融したか,発電所がどれだけ汚染されたか,そして放射性物質汚染の浄化に日本政府がどれだけの費用を出す用意があるかによる。東京電力は少なくとも1つの原子炉では核燃料が完全に溶融して圧力容器の底部に落ちるメルトダウンとなっていると推定している。もしそうなら,燃料棒はもはや形をとどめず,チェルノブイリの場合と似た塊が生じていて,巨大な鋼鉄製の構造で密閉しなければならない。

 

 さらに放射性物質汚染が半径30kmの範囲に広がっている。飯舘村などもっと離れたところでも汚染が深刻で,飯舘は放棄してしまうか,表土を削り取って総入れ替えする必要があるだろう。同様の市町村から約8万人が避難生活を送っている。

 

 日本政府は廃炉と解体を要求している。東京電力は何とか可能ならば被害を受けなかった原子炉を再稼働したいところだろう。しかし残念ながら,どちらの望みもかなわない可能性がある。

 

続きは6月25日発売の8月号誌面でどうぞ。

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