きょうの日経サイエンス

2010年12月31日

Science誌の選ぶこの10年の10大成果:炎症

Science誌の選ぶこの10年の科学の10大成果。6番目の「マイクロバイオーム」から間が空いてしまいました。すみません。<(_ _)>。

 

7番目は「系外惑星」。私たちの太陽系以外でもたくさんの惑星が見つかったのがこの10年。見つかった惑星の中には,生命が存在できそうな惑星もあり,大いに話題になりました。9月にもこのブログでふれたGlese581という赤色矮星の惑星などです。とはいえ,ここはやはり私より詳しい者がいるので,8番目の「炎症」にすすみましょう。

 

10大成果のうち,医学・生物学系の話題が5つも入っていますが,「暗黒ゲノム」「古代のDNA」は,どちらかというとまだ科学通のなかでの話題といった感じがあります。一般の方にも直接かかわりそうなテーマという意味ではこの「炎症」が一番でしょう。

 

ここでいう「炎症」は,皆さまよくご存じの,赤く腫れたりするあの炎症で,特別な言葉ではありません。これが,がんやアルツハイマー症,心臓疾患などにも深くかかわっているとわかってきたのが,この10年です。

 

つい最近も,アスピリン(鎮痛消炎剤)を5年以上毎日飲んでいる人は,大腸がんでなくなるリスクが下がることが報告されていました(ランセットの記事です。こちらから概要が読めます)。

 

炎症は免疫細胞が引き起こす現象です。私たち哺乳類では「獲得免疫」というのが非常に発達していて,これはT細胞やB細胞といったリンパ球が活躍します。特定の病原体だけに狙いを定めて攻撃する,非常にエレガントかつ高度な生体防御機構です。

 

これに対し「自然免疫」という仕組みもあります。こちらは,生物界にわりと広くあります。マクロファージや樹状細胞といった細胞が活躍します。リンパ球ほど特定の相手だけに的を絞るわけでなく,細菌全般,ウイルス全般といった認識をします。

 

自分たちで発達しているものを重要視するのがわれわれ人間の悪い癖で,これまで獲得免疫の研究は盛んに行われていましたが,自然免疫の方はやや低く見られていました。それを覆したのは大阪大学の審良静男先生の業績です。

 

獲得免疫も諸刃の剣として働き,自己免疫疾患のような深刻な病を引き起こしたりしますが,樹状細胞やマクロファージが不適切に活発化すると,慢性的な炎症を引き起こします。これが,さまざまな病気(それもがんや心臓疾患など,わりと患者数の多い病気)の一因となっていることがわかってきたのです!

 

関連する記事
「免疫を悪用するがん」G. スティックス 2007年10月号
タイトルは「がん」とありますが,炎症とさまざまな疾患全般を扱ってます
「もうひとつの防御システム 自然免疫の底力」L. A. J. オニール 2005年4月号

 

さて,Science誌の選ぶこの10年の科学の10大成果はこのあと,「メタマテリアル」「気候変動研究」と続きます。ですが,この2テーマは例のごとく,詫摩よりも得意な者に譲ることにいたします。

 

2010年の春から始めたこのブログ,これまでお付き合いいただき,ありがとうございました。来年も引き続き,よろしくお願いいたします。
皆さま,どうぞ良い年をお迎えください。 <(_ _)> (詫摩)