きょうの日経サイエンス

2010年9月29日

慣性の法則?空気抵抗?

 

 今回のNHK「大科学実験」は「ボールは戻ってくる?」
 一定の速度で走り続けるトラックの荷台から真上に打ち上げられたボールが,どこに落ちてくるか?という大実験。

 

日経サイエンスの読者ならば,慣性の法則で「トラックが一定の法則で走っているんなら,また荷台に落ちてくるでしょ」と答えるでしょうか? それともさらに先を読んで「いや,実際に実験するなら空気抵抗があるから・・・」と答えるでしょうか?

 

今回はディレクターの寺嶋章之さんにお聞きしました。

 

詫摩「今回のテーマって,慣性の法則ですか? それとも空気抵抗?」
寺嶋「いやぁ,慣性の法則だったんですが・・・あんまりそうならなかったですね」
詫摩「空気抵抗で後ろに落ちることは折り込みずみではなかった?」
寺嶋「お恥ずかしいけれど(途中までは)全然・・・」

 

この回に取りかかり始めた制作チームが真っ先に気がついたのは,「ボールを真上に上げる」というのが,実はけっこう大変だ,ということ。とくに水平移動しながらだと,路面の凸凹などの影響も受けてしまいます。軍事技術がベースにあるごつい装置の利用まで検討されたそうですが,予算の都合からもちろんボツ。

 

「どうやってボールを真上に上げるかに気持ちが行ってしまって」,真上に上げさえすればうまくいくと思うようになってしまったそうです。

 

真上に上げる方法は,圧縮空気や火薬の使用など,いささか迷走したあげく,
「ある日,羽岡さんがシーソーのようなものを持ってきて・・・。片方にボールを載せて,ピョンと飛び乗ったら,ボールが真上に上がる」(寺嶋さん)

 

ということで「ハイテクは一切なし,溶接のみ」(寺嶋さん)のあの投石機のような人力装置になりました。

 

実験の舞台は山梨にある航空専門学校の滑走路。路面に凹凸はないし,横風が吹かない向きにそもそも作ってあるし,風のデータもあるし,まさにうってつけの場所です。

 

ところが・・・入らないんですよね?。

 

寺嶋「やってみたら思った以上に空気抵抗が大きくて・・・」

 

前々回の「時速100kmの振り子」で空気抵抗の大きさは体験ずみでは?と思ったのですが,収録はこの回の方が先だったようです。

 

トラックのスピードを遅くすれば入ることはわかっているのですが,
寺嶋「ノロノロじゃあ,大実験にならないでしょ?」
(時速40kmでも本音では満足していなくて「大実験なんだから(時速)100kmで」などともつぶやいていました。やっぱり時速100kmにこだわりがあるのか・・・)

 

今回は実験レンジャーやスタッフの声がほかの回に比べてずいぶん入っていますが,あれも結果を見るまでは誰もわからないから自然とわき上がった声だったそうです。

 

追い風を利用しての大実験だけでも30回,全部100回は試したそうです。
「こんなに厳しいこととは思いませんでした」と寺嶋さん。「入ったのは,たまたま,偶然かもしれない」とさえ言っています。細野晴臣さんのナレーションでは「奇跡の風が吹いたかな」となっていますが,あれはスタッフの本音だったようですね。