きょうの日経サイエンス

2010年8月19日

由緒正しい疑似科学

先日の新聞報道で、日本の医療従事者の間で,これほど「ホメオパシー」が流行っていることを初めて知りました。

 

数学者で著述家のマーチン・ガードナーは、弊誌の連載「数学ゲーム」で日本の読者にもおなじみですが,インチキ科学を積極的に告発したことでも知られています。彼が1952年に出した著書『Fads and Fallacies in the Name of Science』(邦訳は「奇妙な論理」早川書房)で,ホメオパシーを「医療の4大宗派」の1つとして批判してからもう半世紀以上たちますが、今も人気は続いていたんですね。

 

医学を取材していると,しょっちゅう代替療法に遭遇します。害がなくていい気分になるなら目くじら立てる必要はないと思うものの,看過できないのは,推進者がしばしば「西洋医学が身体を悪くしている」と患者を脅すことです。そして「この治療は自然だから安心」と誘うのです。

 

問題が起きて批判されると「本人の選択です」と主張するのが最近の流行のようです。しかしそれを言うなら,選択のために供した情報の質が問われます。科学的根拠のない怪情報を流して代替医療に誘うのは、「先祖の祟りがある」と言って壺だの多宝塔だのを買わせる霊感商法と似ています。

 

この5月に他界したガードナーは,今さら勃発した今回のホメオパシー騒動を,どんな思いで見ているでしょうか。(古田彩)