きょうの日経サイエンス

2010年8月14日

12の出来事ラストワン 核融合エネルギー

発売中の日経サイエンス9月号科学大予測 世界が変わる12の出来事」からサワリをご紹介します。

 

出来事12 核融合エネルギー
2050年までの実現性……まずない

 

 古くからのジョークによると,「実用的な核融合炉は常に約20年先にある」。しかし昨今では,このジョークがやや楽観的にすぎる感じがする。世界最大のプラズマ核融合研究プロジェクトとして南フランスに建設中のITERが実験を始めるのは,早くても2026年になる。実証炉の設計に着手できるようになるのは,最短でもその10年後。実用炉の建設が始まるのは,さらに20?30年先だ。
 核融合発電所の燃料は海水に含まれている重水素であり,有害な排出物は生じない。大気汚染物質も核廃棄物も温室効果ガスもゼロ。太陽の内部で働いているのと同じ作用によって,地球に電力を供給する。しかし実際には,核融合がこれまで考えられてきたように世界を変えることはおそらくない。核融合を引き起こして持続的に制御するのは技術的に難しいことがわかった。さらに,最初の核融合炉が高くついて,今世紀中には広く配備できないのはほぼ確実だ。
 米国立点火施設の所長モーゼス(Edward Moses)らは核融合エネルギーを利用するなら,核融合反応を使って放射性廃棄物の核分裂反応を加速する複合型アプローチが最も早道だと考えている。LIFE(レーザー慣性核融合エンジン)と呼ばれる方法だ(M. モイヤー「核融合炉は本当に可能か」日経サイエンス2010年6月号)。2020年までにLIFEの実証機を建造可能で,2030年には実際に発電所を建設して送電網に接続できると主張する。
 言い換えると,ある実用的な核融合炉まではたったの約20年ということになる。