きょうの日経サイエンス

2010年8月11日

日本の理科教育番組そのもの

 

今晩は自転車タイプの発電機でメリーゴーランドを回転させるというお話の再放送。ですが,高校野球が長引くと,お休みになると聞いておりますので,この回に限らない話題を(…ネタがあまりないという事情もあります)。

 

大科学実験の制作チームは若い方が多いのですが,お一人,シニアの方がいらっしゃいます。エグゼクティブプロデューサーの羽岡伸三郎さんです。NHK教育放送の理科教育番組一筋だった方です。キャリアの長さとNHKという媒体を考えれば,日本の理科教育番組の歴史そのもの,体現者といってよいのではないでしょうか。
 実は,詫摩は羽岡さんとゆっくりお話をさせていただいていないのですが,チームの方々のお話を聞くと,言葉の端々から羽岡さんに対する,並々ならぬ信頼といいますか,敬意を感じます。羽岡さんがある種の“基準”になっているような気さえします。

 

 例えば,詫摩は番組公式サイトに駄文を書かせていただいておりますが,ほぼ毎回,“修正依頼”が入ります。一例を挙げると,公式サイトでは「メリーゴーラウンド」と「ウ」が入りますが,これなどはささやかなもの。こうした文章がらみのこともありますが,お恥ずかしいことに科学的なことに関しても。修正依頼が何もないと逆に不安になるものです。で,担当のMさんにお聞きすると,「大丈夫です。○○(実験テーマの部分)についても,羽岡さんもOKでした」という返事が来たりします。
 『大科学実験』は“NHKの教育番組らしくない”映像が特徴にもなっていますが,その総合演出をしているビヨゴンピクチャーズの寺嶋章之さんも「僕らはみんな羽岡さんの理科番組を見て育ってますから」と,このときだけは,すっと背筋を伸ばして話してくださいました。

 

 でも,何といっても忘れられないのがチーフプロデューサーの森美樹さんの一言。「空飛ぶクジラ」の回で,危険が伴う乗り手の役が森さんだったことは以前にも書きましたが,森さんは
「(乗り手が)羽岡さんだったら,成功しなかっただろうな」
とぼそっとつぶやいたのです。これは本当に独り言みたいな言い方で,最初は意味がわからなかったのですが,その少し前に話していた,「風が吹いたら,クジラをとるか,森さん(乗り手)をとるか」を受けての言葉でした(詳細はこちら)。あの実験では,乗り手を守るためにヒモを強く引けば,クジラに穴が開いて,実験は失敗となることが予想されていました。森さんは「自分とクジラならば,みんなはクジラをとるけれど(もちろん冗談ですよ),羽岡さんとクジラなら,みんな迷わず羽岡さんをとる」と意味で言ったのです。
 このときは,森さん以外の方とはまだお話をしていなかったので,よくわからなかったのですが,今ならばわかります。

 

 詫摩はNHKに何度もお邪魔していますが,私が伺うと,すれ違うかのように羽岡さんは実験室へと行ってしまいます。精進して,いつかお話を聞かせていただきたいと思っています。

 

NHKエデュケーショナルの「大科学実験」のサイトはこちら