きょうの日経サイエンス

2010年5月17日

Wカップ代表メンバーと誕生日のパラドックス

 先頃,FIFAワールドカップ南アフリカ大会(6月11日?7月11日)の日本代表メンバーが発表され,本日17日からクラブチームの試合は約2カ月間中断。いよいよ代表チームの始動です。
 というわけで,個人的には恒例となった(?)選手の誕生日チェック。別に星座占いに凝っているわけではなく,登録選手の数が23人であることがポイント。そうなんです,あの有名な「誕生日のパラドックス」です。
 それ何?という方のために少しご説明です(知ってる方は読み飛ばしてください)。1年を365日として「何人集まれば同じ誕生日の人がいる確率が1/2を超えるか?」という問題があります。その答えが23人。想像していた数よりもずっと少ないのではないでしょうか。そこがパラドックスと言われる所以で,論理的矛盾があるわけではなく,答えは直感をはるかに下回る数だということです。 
 最初にこの話を「セミコロン」(本誌の編集後記)に書いたのが1998年。当時,連載中だったイアン・スチュアート「数学レクリエーション」に刺激されて,フランス大会の代表メンバーをチェックしました。このときは登録選手が22人だったため,岡田武史監督を含めて23人で調べたところ,なんと同じ誕生日の選手が2組いました。中山雅史と服部年宏,山口素弘と呂比須ワグナー(この2人は生まれた年も同じ)。
 次の2002年(日本・韓国共同開催)にも中山と服部が出場したので,やはり1組。そして2006年(ドイツ)では,土肥洋一と駒野友和の1組。
 さて今年2010年は? 23人の本登録は6月1日予定で,現在,予備登録メンバーは30人。今の時点では2組です。30人となると,同じ誕生日の人が1組いる確率はぐっと上がって70%を超えます。
 考え方はシンプルで,n人いるときにn全員の誕生日が異なる確率は,(364/365)×(363/365)……((365-n+1)/365)=356!/356^n(365-n)!となります。1からこの数を引けば,少なくとも2人の誕生日が一致する確率が求められます。イアン・スチュアートが紹介しているように,2人や3人の例から考えはじめると理解しやすいかもしれません。
 誕生日のパラドックスはあちこちで紹介されていますが,ご興味のある方は「数学レクリエーション」の「なんという偶然!」(日経サイエンス1998年9月号掲載)を図書館で捜してみてください。おそらく「誕生日が同じなんて,奇遇だね!」とは言えなくなってしまいます。ちなみに筆者の誕生日は,御年95歳の著名数学コラムニストと同じ。だから何なの?という話ではありますけど,ちょっと嬉しいかも。(菊池)