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単為生殖細胞は胚なのか〜日経サイエンス2012年1月号より

未受精卵から幹細胞を作る研究が規制に縛られている

 

 米連邦裁判所が去る8月にオバマ政権の幹細胞研究の拡充政策を支持したことで,米国の胚細胞研究者はほっと一息ついた。裁判所は,既存の胚性幹細胞(ES細胞)株に関する研究は,連邦政府から研究費を受けている研究室が胚を破壊することを禁じた規制に違反していないとした。

 だが,この法的勝利にもかかわらず,多くの研究者は不満を持ち続けている。幹細胞を作成する新方法の研究は,相変わらず事実上禁止されたままだからだ。

 

民間の研究所が成功したものの…

 ヒトES細胞は一般に受精卵から作られるが,カリフォルニア州にあるバイオ企業インターナショナル・ステム・セルは2007年,未受精卵からヒト幹細胞を作り出すことに初めて成功したと報告した。「単為生殖」と呼ばれる過程を利用した。卵子に化学的な刺激を与えると,あたかも受精したかのように発育し始める。この卵子(単為生殖細胞)は分裂の初期段階では胚とそっくりに振る舞うが,父親からの遺伝物質を含んでいないので胎児に成長することはできない。

 ES細胞と同様,単為生殖幹細胞も様々な種類の細胞や組織に成長でき,病気になった身体部分に移植可能だ。インターナショナル・ステム・セルは単為生殖幹細胞を肝細胞に変化させた。今後はパーキンソン病治療に向けた神経細胞や,糖尿病治療用の膵細胞などに変化させる計画だ。一方,マサチューセッツ州にあるベッドフォード幹細胞研究財団のチームは,単為生殖細胞から幹細胞を作る効率を上げる研究に取り組んでいる。

 ただ,人体に移植しても安定な組織を未受精卵から作り出せるかどうかはまだわからないとカリフォルニア再生医学研究所の所長トラウンソン(Alan Trounson)は指摘する。「他の研究所でも同じ結果が再現されるのを見る必要がある」。

 それは容易ではないだろう。米国立衛生研究所(NIH)のガイドラインと連邦法は単為生殖細胞を胚と定義しているため,連邦政府から研究費を受け取っている研究室は新たな単為生殖細胞株の作成が禁じられているからだ。つまり,ほとんどの研究室は追試ができない。米国では,この新分野の進歩は少数の民間研究施設にかかっている。

 

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