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アジャンクールの鎧〜日経サイエンス2011年12月号より

中世の兵士は重い鎧に負けた?

 

 1415年8月13日,27歳のイングランド王ヘンリー5世はフランスに進軍した。だが2カ月間で兵士の約1/4を赤痢で失ったうえ,4倍の兵力を持つフランス軍によってカレーからイギリス海峡を渡る退路も閉ざされた。冬が近づき,食糧も乏しくなった。
 ところが,ここで戦史でも異例の番狂わせが起こった。7000人に満たないイングランド軍(ほとんどが軽武装の射手)が,2万〜3万人の重装備のフランス軍をアジャンクール村近くで撃退し,数千人を殺傷したのだ。シェークスピアの戯曲『ヘンリー五世』はこの戦いの勝因を兵士を鼓舞する王の話術と結びつけた。また,有名な戦史家のキーガン(John Keegan)はフランス軍の突撃が自滅的な押し合いになったと分析した。
 しかし,最近の運動生理学者はこの大殺戮に関して新たに別の原因を示している。鎧(よろい)がフランス軍の重荷になったかもしれないというのだ。

 

身につけて実験
 英リーズ大学の研究者たちは鎧を身につけた被験者にルームランナーに乗って運動してもらい,酸素消費量を調べた。15世紀に一般に使われていた鎧は30kgから50kgほどの重さがあり,頭から手足の先までを覆う。重さがかかっていないところはなく,被験者たちは鋼鉄の板がついた足を前に踏み出すのに大きな力を要した。また,胸部が板で締めつけられているため,呼吸は短く浅くならざるをえなかった。
 この結果,鎧を着用した被験者の代謝エネルギー要求量は通常の2倍になることがわかった。ちなみに,同じ重さの荷物をバックパックに入れて背負った場合は約70%増にとどまった。(続く)

 

続きは現在発売中の12月号誌面でどうぞ。

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アジャンクールの戦い