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よみがえったアルキメデス〜日経サイエンス2011年12月号より

長らく行方不明だった天才の著作が復元された

 

 古代ギリシャの数学者,シラクサのアルキメデスについては多くのウソっぽい言い伝えがある。「エウレカ(ひらめいた!)」という表現を広めたとか,鏡を使ってローマ軍の船団を焼き払ったとか,紀元前212年に砂の上に図を描いていたところをローマ軍の兵士に殺されたといった話だ。
 こうした言い伝えはおそらく事実と異なるばかりか,アルキメデスの本当の功績をとらえていないと歴史家はいう。アルキメデスの功績は数学,科学,工学にわたり,ダ・ヴィンチやガリレオ,ニュートンのような人々にまで刺激を与えた。彼が微積分法の基本を考えついていたとみる人もいる。
 メリーランド州ボルティモアにあるウォルターズ美術館で10月から開かれている展示会で,長いこと行方不明になっていたアルキメデスの著作が復元・展示されている。新発見の業績もいくつかある。圧巻は「アルキメデス・パリンプセスト」として知られる羊皮紙に書かれた本だ。

 

祈祷書に残っていた論文
 中世の暗黒時代を生き延びたアルキメデスの著作は,ある時点でたった3冊の学術書にまとめられた。10世紀のコンスタンチノープル(現在のイスタンブール)にいた写本者によって作られたものだ。うち1冊は「C写本」と呼ばれ,1204年に西ヨーロッパの十字軍が東ローマ帝国の首都を略奪した後に行方知れずになった。
 その後1906年になって,デンマークの文献学者ハイベルク(Johan Ludvig Heiberg)がコンスタンチノープルの修道院で祈祷書を発見し,それがパリンプセストであることに気づいた。パリンプセストとは,羊皮紙でできた古い書物のページを切り取り,羊皮紙の表面をこすってきれいにした後に文字を記したリサイクル本のことだ。
 ハイベルクは祈祷書に残っていた痕跡から,以前はこれがC写本だったことに気づいた。ルーペを片手に痕跡を苦労して読み取り,書き写した。なかには新発見の論文2編の一部もあった。1つは「機械理論の方法」で,てこの原理と身体の重心を計算する方法が述べられている。基本的には現在も使われている方法だ。もう1つは「ストマッキオン」と呼ばれ,タングラム(図形合わせパズル)に似たゲームに関するものとみられた。
 やがてこの本も行方不明になったが,1998年にニューヨークのオークションで再び公の前に現れた。これを匿名の収集家が200万ドルで落札し,ウォルターズ美術館に貸与した。(続く)

 

続きは現在発売中の12月号誌面でどうぞ。

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アルキメデス・パリンプセスト