日経サイエンス  2020年10月号

特集:洪水水害を予測する

3時間先はどうなる? 危険度分布が示す切迫度

古田 彩(編集部) 協力: 太田琢磨(気象庁)

 近年,夏になると決まって豪雨による河川の氾濫や市街地の浸水が起き,深刻な被害が報じられる。2020年も7月に九州地方と中部地方の広い範囲で豪雨が続いて熊本県の球磨川水系が氾濫,大きな被害が出た。

 集中豪雨の発生頻度はここ35年で4割上昇した。気象庁は3年前から,全国2万1000の河川について,今どの川にどの程度水害の危険が迫っているかを色分けして示す「洪水警報の危険度分布」の公表を始めた。濃い紫の川は,災害がすでに発生していてもおかしくない「極めて危険」な状態。うす紫で示した川は,3時間以内に濃い紫の状態に至ると予測される「非常に危険」な状態だ。また,川とは関係なく浸水が起きる危険を1km四方のエリアごとに示した「大雨警報の危険度分布(浸水害)」も同様に公表している。

 危険度分布はどのように作られ,どの程度当たるのか。危険度分布のもとになった研究と,予測が成功あるいは失敗した例について,実際の開発に当たった気象庁の太田琢磨・水害対策気象官に聞いた。

協力 太田琢磨(おおた・たくま)
気象庁予報部予報課気象防災推進室水害対策気象官。流域雨量指数と表面雨量指数を開発した業績で2018年度岸保・立平賞を共同受賞。