日経サイエンス  2020年7月号

特集:COVID-19パンデミック

治療薬開発 3つの戦略

細胞への侵入阻止,ウイルス増殖を抑制……

M. ウォルドホルツ

SARS-CoV-2によるパンデミックが続く中,状況を根本的に変える可能性があるのは治療薬とワクチンだ。カギとなるのは開発のスピードで,別の病気のためにすでに承認されている薬や,開発の途中で実用化を断念した試験薬などを含めて,COVID−19の治療に役立つ特性を持つ化合物を探す試みが進んでいる。

 

現在開発が勧められている治療薬は,次の3つのいずれかの作用を持つ。第1は,ウイルスが目的の細胞に入り込んだときに働く増殖機構を妨げるもので,先に緊急承認されたレムデシビルや,日本で開発されたファビピラビルはこれに属する。

 

第2はウイルスが細胞に入り込んで感染するのを阻止するもので,ウイルスのスパイクタンパク質に結合する抗体医薬や,東京大学が臨床試験を始めたナファモスタットなどはこのタイプだ。

 

第3はウイルス自体を抑えるのではなく,免疫の危険な過剰反応であるサイトカインストームを抑制し,急性呼吸窮迫症候群などの症状を改善する。サリルマブやトシリズマブといった炎症性疾患の治療薬などがそうした作用を持つと期待されている。

 

ヘルスケア分野を含むリサーチを手掛ける米シンクタンクのミルケン研究所(カリフォルニア州)によると,COVID-19の治療薬候補は4月半ばの時点で133種に上り,うち49種については臨床試験が始まりつつある。

著者

Michael Waldholz

エイズ報道で1997年にピュリツァー賞を共同受賞。ニューヨーク州ハドソンバレー在住。

原題名

Fast-Track Drugs(SCIENTIFIC AMERICAN June 2020)

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