日経サイエンス  2020年1月号

特集:AI 人工知能から人工知性へ

科学がAIで変わる

吉川和輝(日本経済新聞) 語り:岡田真人(東京大学)

素粒子論や超弦理論を研究する橋本幸士大阪大学教授は,AIの深層学習を使って超弦理論に基づく重力模型を再構築し,その模型に新しい時空を「創発」させる研究を手がけている。重力理論を多層ニューラルネットワークによる表現に書き直し,場の量子論を用いた数値計算から得られるデータを入力する。するとニューラルネットワークの重み付けによって重力場の性質が定まり,入力した場の量子論のデータに対応する時空が導かれるという。

 

2019年にドイツで開かれたセミナーで成果を発表したところ,終了後にある研究者が声をかけてきた。「あなたが深層学習で導いたという時空の式は,私が見つけたものと同じですね」。慌てて調べてみると,確かにその研究者は論文にして発表していた。AIが人間の理論家と同じ結論を導いたことになる。「物理のモデルと機械学習のモデルのいくつかは相互に“翻訳”が可能だ。近年進展が目覚ましい機械学習の手法を使うことで,物理学での新機軸が打ち出せる」と橋本は話す。

 

「科学の方法論に革新」 スパースモデリングの研究を率いる岡田真人東京大学教授へのインタビューを併せて掲載。

 

著者

吉川和輝(よしかわ・かずき)

日本経済新聞社編集委員。1982年入社,産業部,ソウル支局などを経て科学技術部記者に。米マサチューセッツ工科大学で科学ジャーナリズムを学んだ。2012~2015年に日経サイエンスの発行人を務めた。現在はエマージングテクノロジー,物理学,宇宙開発,科学技術政策などのテーマで執筆している。

語り:岡田真人(おかだ・まさと) 
東京大学大学院新領域創成科学研究科教授,理学博士。三菱電機,大阪大学助手,科学技術振興事業団研究員,理化学研究所脳科学総合研究センター副チームリーダーを経て2004年より現職。専門は物性物理,神経回路モデル,計算論的神経科学,統計的学習理論。

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銀河中心の巨大ブラックホールを観測」,中島林彦,日経サイエンス2019年7月号。

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ホログラフィック原理.AdS/CFT.深層学習.スパースモデリング弦理論