日経サイエンス  2019年11月号

特集:北極融解

にらみ合いの行方

K. スティーブン(持続可能性高等研究所=ドイツ)

今年3月,米国のB-52戦略爆撃機などが加わるNATO(北大西洋条約機構)合同軍事演習が行われていたノルウェー海上空の同じ空域に,ロシアの戦略爆撃機2機が侵入した。驚いたノルウェー軍は急遽,F-16でこれを追跡した。2機はそのまま英国に向かって飛んだ後に旋回してロシアに戻ったが,この事件は気がかりだ。これら米ロの爆撃機は核兵器を搭載可能であり,両国は2カ月足らず前に中距離核戦力(INF)全廃条約の破棄を表明したばかりだった。

北極の現状を目にして緊張の高まりを懸念するのは無理もない。地球温暖化によって物理的アクセスが容易になったため,北極圏内に領土や領海を持つ8カ国にとって北極は喫緊の政治課題となった。だが,衝突が不可避であるとは限らない。北極地域諸国には協力を図る十分な理由がある。そして各国の現在の行動は見かけほど攻撃的なものではないのかもしれない。経済協力が政治的な協力を助長し,勝利を得る可能性がある。

 

著者

Kathrin Stephen

ドイツのポツダムにある持続可能性高等研究所で科学グループのリーダーを務めている政治学者。ワシントンにあるシンクタンク,北極研究所・極域セキュリティー研究センターのシニアフェロー兼編集長でもある。

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アラスカ北極圏にいた恐竜たち」,A. R. フィオリロ,日経サイエンス2005年3月号。

原題名

Is Confrontation Inevitable?(SCIENTIFIC AMERICAN August 2019)

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