日経サイエンス  2019年11月号

特集:北極融解

北極海争奪戦

ぶつかる主張

M. フィシェッティ(SCIENTIFIC AMERICAN編集部)

北極海の海底について沿岸各国が権利を主張している。先行したのはノルウェーで,北極海海底の3区画に関するデータを2006年に大陸棚限界委員会(CLCS)に提出した。同委員会はこうした権利請求が科学的に適切かどうかを審査する国際機関だ。グリーンランドを領有するデンマークはその後数年をかけて大量のデータを集め,90万km2に及ぶ領域に関する権利を主張する書類を2014年に提出した。ロシアは130万km2(日本の国土面積の3.4倍)について権利請求する書類を2015年に提出。この領域はデンマークが主張する区画の半分以上と重なっている。カナダは110万km2の権利を主張する試料を今年5月に提出た。この区域はロシア及びデンマークが主張する区域と大きく重なっている。5番目の北極海沿岸国である米国(アラスカ州が北極海に面している)が権利請求する予定は少なくとも2022年まではないが,請求範囲はカナダの領域と重なるとみられている。

近代史の大半において,各国は北極海をほぼ無用の氷の板と見なしてきた。しかしその氷が融け始め,好機が露出した。米地質調査所の2008年の研究は,世界で未発見の天然ガスと石油のそれぞれ30%と13%が北極地域の厚い堆積層に存在している可能性があると結論づけた。海氷の後退は船の航路が開ける可能性を意味する。そこに豊かな未来を見た沿岸5カ国はいずれも,できるだけ広い領域を確保しようと熱望するようになった。国連海洋法条約(UNCLOS)に基づく延長大陸棚の認定ルールを含め,最新の状況をリポートする。

原題名

Divide or Conquer(SCIENTIFIC AMERICAN August 2019)

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