日経サイエンス  2019年4月号

走る動物 ヒト

バイオメカニクスから見た走りの人類史

出村政彬(編集部)

 「今から走って下さい」と誰かに言われれば,走ってみせることは誰にでもできる。しかし「どのように走っているか説明して下さい」と言われれば,途端に私たちは首をかしげて立ち止まらざるを得ないだろう。さらに「どうしてあなたは走れるのですか?」と聞かれた日にはもうお手上げだ。だが,私たち人類が10 秒を切るスピードで100m を駆け抜け,何十キロもの長距離を走り切れるのには訳がある。しかもその能力は,まだまだ発展の途上にありそうだ。

 バイオメカニクス(生体力学)研究による分析は,「走る」という一見単純なこの動作がいかに複雑で緻密なものであるかを教えてくれる。そこには,人類がこの先どこまで速く走れるようになるのか,その限界を考えるヒントが隠されている。

 さらに,人類の走りは私たちがこれまで思ってきたより,もっと多様なものかもしれない。両手両足を全て地につけて疾走する「4足走者」の挑戦とその研究は,私たちの走りがいかにして今日のようなフォームを取るようになったか,走りの歴史を振り返る上で重要な意味を持っている。人類は「走るように進化した」と言っても過言ではない。そしてこれを読んでいるあなたも,走る動物,ヒトの末裔に他ならないのだ。

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短距離走,マラソン,人類学,バイオメカニクス