日経サイエンス  2018年12月号

特集

特集:新・人類学

ヒトはなぜ人間になったのか

編集部

 人間は地球上のあらゆる動物の中で,極めてユニークな存在だ。このサイズの動物としては極端に数が多く,生息範囲は群を抜いて広い。言語を生み出し,知識を集積し,社会を形成し,技術を開発し,良くも悪くも地球全体を変えてきた。人間を人間たらしめている特性を,ヒトはいかにして獲得し,発展させてきたのだろうか。また,これからどこへ向かおうとしているのだろうか。特集「新・人類学」は全69ページにわたって「人間」そのものを俎上に上げ,総力特集する。
 第1部「人間性の起源」は,ヒトという種の特異的な進化をもたらした鍵となる事実を明らかにする「ヒトがヒトを進化させた」(32ページ)で幕を開ける。続いて人間の傑出した思考力の源泉はどこにあるかを実験的に調べた「思考力をもたらした2つの性質」(40ページ),人間とその他の動物の意識に差があるかどうかを掘り下げる「意識を持つのは人間だけか」(46ページ)へと続く。言語で複雑な内容を正確に伝えることができるのは人間だけだが,「言語遺伝子」は見つかっていない。なぜ人間だけが言語を発達させたのか,そのわけを「高度な言語が生まれた理由」(52ページ)で推定する。脳の容積比率をほかの種と比較する「データで見る脳の違い」(58ページ)も盛り込んだ。
 第2部「『他者』とのかかわり」は,今残っている唯一のヒト科ヒト属であるホモ・サピエンスと,絶滅した他の人類種とのかかわりを探る「ホモ・サピエンス成功の舞台裏」(62ページ)から始まる。「他人の立場に立って考える」という高度な技術を持つのは人間だけで,「モラルを生んだ生存競争」(68ページ)では,その意外なルーツを明らかにする。その一方で,人間は大規模な集団的殺し合いをする種でもある。「戦争は人間の本能か」(74ページ)は,戦争はヒトの生来の特性によって起きるのか,はたまた社会の発達過程で発生したものかを考える。
 第3部「明日の姿」では,人間が作り出した都市がすでにほかの生物の進化の道筋を変えている実例を示す「都市が変える生物進化」(82ページ),AIの将来像は人間のライバルではなく代役だとする「分身AIがつくる社会」(88ページ)を掲載。最後は,この宇宙のどこかに人間のような知的生命体がいる確率を見積もり,宇宙における人間の存在について考える「人類という奇跡」(94ページ)で締めくくった。どうかたっぷりとお楽しみ頂きたい。(編集部)