日経サイエンス  2018年6月号

特集:ホーキング追悼

ホーキングの遺産

大栗博司(米カリフォルニア工科大学/東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構)

「理論物理学者には,抽象的・概念的な思考に長けている人と,具体的な問題を解くための数理的な技術に長けている人という2つのタイプがある。だがこの3月14日に生涯を終えたホーキング(Stephen W. Hawking)は,大胆な発想と概念的な思考とともに,そのアイデアを最後まで突き詰めることのできる強靭な数理技術を併せ持つ稀有の科学者であった。英オックスフォード大学のペンローズ(Roger Penrose)との共著の宇宙の特異点定理の証明や,ブラックホールの蒸発を予言したホーキング放射の論文はとりわけ名作であり,読むたびごとに以前には気がつかなかった新しいアイデアが見つかる。彼が科学に記した足跡を振り返ってみたい。」(前文より)

 

*筆者の大栗博司氏は,ホーキング博士が亡くなる数年前まで毎年滞在していた米カリフォルニア工科大学の教授で,素粒子論の語り手としても知られる。ホーキング博士の科学的な業績と理論物理学に与えた影響,学生たちの指導方法や日常生活までを余すところなく語った。

著者

大栗博司(おおぐり・ひろし)

カリフォルニア工科大学カブリ冠教授,同大学ウォルター・バーク理論物理学研究所所長,東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構主任研究員。アスペン物理学研究所所長。専門は素粒子論で,主に超弦理論を研究している。一般向けの著書も多く,4月に一般向けの科学解説や対談などをまとめた『素粒子論のランドスケープ2』(数学書房)を出版する予定。

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