日経サイエンス  2018年1月号

麻酔手術の曙

L. フィッツハリス(医学史研究家)

1846年12月21日,英ロンドン大学の階段手術教室でロバート・リストンという外科医がエーテルを用いた全身麻酔手術を実演した。それまで手術は激痛を伴う苦しみと同義だったが,重い骨髄炎に苦しんでいた患者は右脚の切断に何の痛みも感じず,手術の様子を見守っていた外科医たちは驚嘆した。画期的技術として熱狂的に迎えられたエーテル麻酔だが,話はそこで終わらない。無痛手術が可能になったことで実施例が増え,皮肉にも術後の感染症で死亡する例が増えた。この問題に挑んだのが,あの階段教室の隅で実演を見ていたジョセフ・リスターという若い医学生だった。後に手術器具の消毒などの対策が確立したのは彼の努力による。

著者

Lindsey Fitzharris

医学史研究家。医学の知られざる歴史に焦点を当てたウェブサイトの運営とビデオシリーズの制作に取り組んでいるほか,Lancet誌やNew Scientist誌などに記事を執筆している。近著に「The Butchering Art」がある。

原題名

Dangerous Medicine(SCIENTIFIC AMERICAN October 2017)

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