日経サイエンス  2018年1月号

特集:性とジェンダーの科学(後編)

“才能”という罠

A. シンピアン(ニューヨーク大学) S-J. レスリー(プリンストン大学)

アメリカにおいて,博士号取得者のうち女性やアフリカ系の比率が高いのは美術史,心理学,教育学,美術史だ。逆に作曲学,哲学,物理学,コンピューター科学などでは低い。

 

こうした差は,何に起因するのだろうか。数学の必要度や,仕事に費やさねばならない時間の長さ,人間ではなく無生物的なシステムを対象にしていることなど,様々な説がささやかれている。だが最近の調査から,女性やマイノリティ比率ともっともよく相関するのは,その分野における「才能重視の度合い」だとわかった。その分野で成功するには「並外れた知的才能が必要」と思われている度合いが強いほど,女性やアフリカ系の比率は下がる。

 

 

表面的には,才能を重視したからといって,女性やアフリカ系にマイナスに働く理由はない。知的能力と性別や人種の間に関係はないし,その分野で求められているのは優れた頭脳であって,それが誰のものでも構わない。一見筋が通っているように思えるこうした才能重視の姿勢が問題になるのは,特定のグループ(例えば白人男性)の知性がほかのグループよりも優れているという誤ったステレオタイプが,社会全体に広がっているためだ。

 

著者

Andrei Cimpian / Sarah-Jane Leslie

シンピアンは,ニューヨーク大学の心理学の准教授。レスリーはプリンストン大学の教授。

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原題名

The Brilliance Trap(SCIENTIFIC AMERICAN September 2017)

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