日経サイエンス  2017年11月号

特集:がん免疫療法のブレークスルー

CAR-T細胞でがんを攻撃

A. D. ポージー/C. H. ジューン/B. L. レバイン(いずれもペンシルベニア大学)

人間の身体には生来,がんを殺す免疫細胞「T細胞」が備わっている。樹状細胞からシグナルを受け取ると分裂して自分のコピーを増やし,サイトカインと呼ばれる化学物質を放出して身体の免疫応答を高めるのだ。1990年代半ば,ペンシルベニア大学の研究チームは,このプロセスを強化しようと考えた。患者からT細胞を取り出して,がん細胞の表面にあるタンパク質を認識する受容体(CAR)を組み込んで患者に戻す。CARによって活性化したT細胞は,白血病細胞を認識して結合し,攻撃する。

 

2010年,初の臨床実験を実施した。ところがCAR-T細胞を投与した重い白血病の男性は,10日後に発熱と呼吸困難に陥り,集中治療室に収容された。免疫系が大量のサイトカインに反応して暴走する「サイトカインシンドローム」が起きたのだ。命にもかかわる重い副作用だったが,男性は何とか持ちこたえた。さらに驚いたことに,1カ月後には白血病細胞がまったく検出されなくなった。だが国立研究機関の審査委員会は,この治療法は危険すぎ,これ以上資金を提供する価値はないと判断した──。このほどついにFDAに承認されたCAR-T療法の生みの親,米ペンシルバニア大学のジューン教授らが,20年余に及ぶ研究の経緯を語る。

 

著者

Avery D. Posey, Jr./Carl H. June/Bruce L. Levine

ポージーはペンシルベニア大学ペレルマン医学大学院の病理・臨床検査の講師で,ジューンは同教授。レバインは同大学でがん遺伝子療法の教授を務めている。

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HIVに感染しない細胞」,C. ジューン/B. レバイン,日経サイエンス2012年6月号。

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