日経サイエンス  2017年9月号

nippon天文遺産 第10回

樺太国境を決めたバンベルヒ子午儀

中島林彦(日本経済新聞) 渡部潤一/中桐正夫(ともに国立天文台) 洞口俊博(国立科学博物館)

 かつて東京大学天文学科の学生は古めかしい子午儀を使った実習に汗を流した。子午儀は,日周運動する恒星が子午線(天頂,天の南極と北極を通る大円)を通過する時刻を測定する子午線観測に特化した望遠鏡だ。国立天文台で天文遺産の保護に取り組む渡部潤一副台長もこの子午儀の世話になった。

「1980年代,天文学教室があった建物の屋上に,かまぼこ形の小さなドームがあり,その中に子午儀が入っていた。位置天文学観測実習という授業で,実際に恒星が子午線を通過する時刻を観測し,そのデータを解析して観測地点の経緯度を算出した。いい加減な観測をしてしまうと,算出した経緯度が東京湾の上になったりしたものだった。位置観測をするときの基礎を学んだ,実に貴重な体験だった」(渡部氏)。

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