日経サイエンス  2016年10月号

人類を進化させた石器作り

D. スタウト(エモリー大学)

 人間の認知能力はどう進化してきたのだろう。脳も行動も化石には残らないため,この問いに答えるのはなかなか難しい。ただ,有史以前の人々の技能を再現する実験考古学というアプローチがあり,著者のグループは石器作りを学ぶ被験者の脳画像を頼りに,この謎に挑んでいる。現代人が石を打ち欠いて握斧の形にしていく際に,どの脳領域が活性化するかを脳画像装置を用いて観察するのだ。この結果,道具作りが人類の進化の重要な原動力になったという考え方が復活した。石器作りの技術を教えたり学んだりすることは,私たちの祖先にとって極めて難しい挑戦であり,それが言語の進化を加速させた可能性がある。

 

 

【スライドショー】 The Art and Craft of Paleo Toolmaking
石器製作実験についてのスライドショー。

 

再録:別冊日経サイエンス219 「人類への道 知と社会性の進化」

 

著者

Dietrich Stout

エモリー大学の人類学教授。旧石器時代の石器作りをテーマに,考古学から脳画像化技術まで多様な分野の実験法を統合した研究を行っている。

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創造する人類」,H. プリングル,日経サイエンス2013年8月号。

原題名

Tales of a Stone Age Neuroscientist(SCIENTIFIC AMERICAN April 2016)

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