日経サイエンス  2016年10月号

フロントランナー挑む 第64回

「タフ」で「しなやか」物性両立したポリマー:伊藤耕三

池辺豊(日本経済新聞シニア・エディター)

「ポリロタキサン」という高分子を使い,しなやかさを持ち,
構造材料に使える素材の実現が見えてきた
プラスチック製自動車のコンセプトカー提示を目指す

 自然界にはない物質を合成する高分子化学の研究が始まってから約90年。ポリマーの物性で,剛性(硬さ)と延性(伸び)は両立しないと考えられてきた。しかし,伊藤耕三は「しなやかなタフポリマー」の実現に挑んでいる。例えば亀裂が入っても進展しにくい,柔軟性をもって応力をかわす,劣化しても自己修復して老化を防ぐなどの機能が期待されている。そのポリマーを主な部品として使う斬新なコンセプトカーを開発するのが,さしあたっての目標だ。2020年の東京五輪で,「新車」のお披露目を狙っている。    (文中敬称略)

 

 

再録:「挑む!科学を拓く28人」

 

伊藤耕三(いとう・こうぞう)
東京大学大学院新領域創成科学研究科教授。1958年山形県生まれ。86年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。通商産業省工業技術院繊維高分子材料研究所へ。91年東大講師,94年助教授,2003年から現職。05年アドバンスト・ソフトマテリアルズ(ASM)を創業。

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