日経サイエンス  2016年5月号

フロントランナー 挑む 第59回

「やれば何とかなる」地道に青いバラを実現:田中良和

永田好生(日本経済新聞編集委員)

多くの育種家が長年取り組んできた不可能の代名詞「青いバラ」
パンジーの色素を合成する遺伝子導入で希望が開けた
本当の青色を目指して研究を進める

 

 
 サントリーホールディングスが2015年に完成させた研究所,ワールドリサーチセンター(京都府精華町)で,青いバラの開発プロジェクトを率いた田中良和は所在なさそうに現れた。それまで大阪府島本町で3カ所に分散していた研究所を統合,約400人が組織や分野の壁を越えて交流できる拠点となった。同時に,個人が決まった机を持たない「フリーアドレス」方式を取り入れた。田中は「まだなじめていないので」と苦笑する。個人向けの収容スペースは大幅に少なくなったため,引っ越しのとき資料をばっさり捨てたという。「それで困ったことが起きていないから,また問題なんですけれど」と,淡々と話す。(文中敬称略)

 

 

再録:「挑む!科学を拓く28人」

 

田中良和(たなか・よしかず)
サントリーグローバルイノベーションセンター研究部上席研究員。1959年神戸市生まれ。1983年大阪大学大学院理学研究科修士課程修了,サントリー入社。1988年に阪大で理学博士号を取得。1990年から4年間,青いバラの開発のためオーストラリアに駐在。帰国後,植物科学研究所長などを経て2013年より現職。ワールドリサーチセンターで研究開発に携わる。日本農学賞,日本植物細胞分子生物学会特別賞,全国発明表彰発明賞などを受賞した。