日経サイエンス  2015年11月号

隠された難聴

M. C. リバーマン(ハーバード大学)

騒音の激しい工場や大音響のコンサートが聴覚障害を引き起こすことがある。騒音性難聴といわれ,大きな音によって聴覚の閾値が上昇し,普通の会話などが聞き取りにくくなる。内耳の有毛細胞に損傷がなければ,聴力はやがて回復すると考えられてきた。ところが最近の研究から,有毛細胞が無傷でも,その先につながる聴神経のシナプスが騒音によって破壊されると,有毛細胞との接続が断たれ,回復不能の難聴に陥ることがわかってきた。聴覚閾値の検査では“正常”な結果が出ることから,「隠された難聴」とよばれる。著者らは神経栄養因子を用いた治療法を探る一方,聴神経を守るために騒音への注意を呼びかけている。

 

 

再録:別冊日経サイエンス224「最新科学が解き明かす脳と心」

 

【関連動画】How Hearing Works

著者

M. Charles Liberman

ハーバード大学医学部の耳科学と喉頭学の教授で,マサチューセッツ眼科耳鼻科病院のイートン・ピーボディ研究所の所長を務める。耳の内部と脳をつなぐ経路を研究している。

原題名

Hidden Hearing Loss(SCIENTIFIC AMERICAN August 2015)

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