日経サイエンス  2015年5月号

がんをたたくウイルス療法

D. J. マホーニー(加カルガリー大学) D. F. ストイドル(加オタワ大学) G. レアード(サイエンスライター)

 ウイルスを使ってがん細胞を殺すアイデアが生まれたのは100年ほど前のこと。子宮頸がんのイタリア人女性が犬に噛まれ,狂犬病ワクチン(弱毒化した狂犬病ウイルス)の接種を受けたところ,腫瘍が消えたのがきっかけだった。ただ,その後のウイルス療法は成果がまちまちで主流にならなかったが,近年になって状況が変わってきた。特別な遺伝子組み換えウイルスは,健康な組織を害さず腫瘍細胞だけに感染して破壊できる。免疫系を刺激して腫瘍を攻撃させる機能を付加したウイルスも開発された。既存の治療法を補完する有力なアプローチとして,今後数年のうちにいくつかのウイルス薬が実用化しそうだ。

著者

Douglas J. Mahoney / David F. Stojdl / Gordon Laird

マホーニーはカナダ・カルガリー大学の微生物学・免疫学・感染症学科の助教。ストイドルはカナダのオタワ大学の小児科と生化学・微生物学・免疫学科の准教授で,東オンタリオ小児病院研究所の上級研究員。このほどシラジェン社に買収されたがんウイルス療法の会社の共同設立者でもある。レアードはCNNやBBC,NPRなどに寄稿しているライターで,カナダのナショナル・マガジン・アワードを数回受賞している。

原題名

Virus Therapy for Cancer(SCIENTIFIC AMERICAN November 2014)

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