日経サイエンス  2015年3月号

特集:STAPの全貌

編集部

 1年にわたって社会と科学界とを揺るがせた「STAP細胞」の正体が明らかになった。それは実験の場となった研究室に所属していた研究員が10年前に作り,研究に使わないまま保存していた胚性幹細胞(ES細胞)だった。どういう経緯かは不明だが,その6年後,この細胞は「STAP細胞」として現れ,様々な実験に使われ,多能性の証拠をもたらした。

 

 “容疑”のES細胞に最初に気づいたのは公式の調査委員会ではなく,自らデータを解析した1人の研究者だった。理研の上層部が残された細胞やマウスの調査に後ろ向きな発言を繰り返していた間,理研の内外の研究者たちが,公開された遺伝子配列データを調べ上げ,実験で問題の遺伝子を確認し,STAP細胞は存在しないとの科学の証拠を積み上げた。これを受けて理研もついに重い腰を上げ,新たな調査委員会を発足。残された細胞やマウスのゲノムを片端から解読したところ,STAP細胞の正体が浮かび上がってきた。

 

 事実究明に至る研究者たちの軌跡と,「STAP細胞」と呼ばれた細胞の全貌を解説する。

 

幻想の細胞 判明した正体  詫摩雅子/古田彩

事実究明へ 科学者たちの360日  古田彩/詫摩雅子