日経サイエンス  2014年10月号

フロントランナー挑む 第43回

生命の仕組みで計算する:萩谷昌己

長倉克枝(科学ライター)

生命現象の中には計算がある
それを引きだして人工的に実現する分子コンピューターは
分子レベルから生命を再構築する道を開くかもしれない

 

 

 「ものを作るときには計算をしますが,実は計算そのものがものづくりなんです」。萩谷昌己はそう話す。一体どういうことだろうか。繰り返し出てきたのが「自然計算」という単語だ。身の回りの自然現象をよく見ると,実はそこには「計算」と呼べるプロセスがある。例えばDNAの情報からタンパク質が作られていく過程も,それ自体が一つの計算過程だと言える。そうした自然現象を分析して計算モデルを作り上げ,人工的な系に実装する。萩谷はそんな自然計算の発想から,生体分子で計算をするコンピューターを作り,生き物のメカニズムや機能を再構築しようとしている。 (文中敬称略)

 

 

再録:「挑む!科学を拓く28人」」

 

萩谷昌己(はぎや・まさみ)
東京大学大学院情報理工学系研究科コンピューター科学専攻教授
1957年生まれ。80年東京大学理学部情報科学科卒業,88年京都大学理学博士,92年東京大学理学部助教授,95年から現職。専門は計算モデル,ソフトウェア検証,分子コンピューティング,分子ロボティクスなど。日本学術会議会員,情報科学技術教育分科会委員長として,文系理系の学部学科を包含する情報学の定義の策定にも携わる。