日経サイエンス  2014年9月号

特集 記憶の謎に迫る

記憶を調整する新生ニューロン

M. A. キアベック R. ヘン(ともにコロンビア大学)

 記憶がごちゃ混ぜにならないよう,脳は出来事や状況の特徴を他と区別できる形でコード化して蓄えなければならない。「パターン分離」と呼ばれるこのプロセスのおかげで,私たちは危険な状況と,それによく似てはいるが心配のない状況を区別できている。この能力が欠けている人は不安障害になりやすいだろう。一方,脳で一生を通じて新たなニューロンが生まれている領域が2つ知られており,パターン分離はその1つである海馬の「歯状回」という小さな領域で処理されている。パターン分離にはこれらの新生ニューロンが不可欠なようだ。新生ニューロンを特異的に増強する方法を開発すれば,不安障害や心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの治療が可能になるかもしれない。
 
 
再録:別冊日経サイエンス207「心を探る 記憶と知覚の脳科学」

著者

Mazen A. Kheirbek / René Hen

キアベック はコロンビア大学の精神医学科の助教(臨床神経生物学)で,ニューヨーク州立精神医学研究所のリサーチサイエンティストを兼務。ヘンはコロンビア大学の精神医学,神経科学,薬理学の教授で,ニューヨーク州立精神医学研究所の精神医学科で統合神経科学部門の部門長を務めている。キアベックが2009年にポスドク研究員としてヘンの研究室に加わって以来,2人は歯状回とその新生ニューロンが記憶と気分に果たしている役割を共同研究してきた。

原題名

Add Neurons, Subtract Anxiety(SCIENTIFIC AMERICAN July 2014))

サイト内の関連記事を読む

キーワードをGoogleで検索する

ニューロン新生海馬心的外傷後ストレス障害パターン分離歯状回顆粒細胞下帯条件づけ