日経サイエンス  2014年8月号

積分法前史 「カヴァリエリの原理」をめぐる知られざる宗教論争

A. アレクサンダー(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)

 17世紀,イタリアの数学者カヴァリエリは平面が無数の直線からできており,立体は無数の平面からできていると提唱した。こうした「不可分要素」を用いて長さや面積,体積を計算できるという主張で,後の積分法につながる考え方だ。これに対しスイスの数学者ギュルダンが猛烈な反論を展開し,不可分要素の考え方は不合理だと批判した。だが,この議論には純粋に数学的な理由を超えた背景があった。2人は同じカトリック教会ではあるが哲学がまったく異なる修道会に属していた。ギュルダンはイエズス会(ジェスイット),カヴァリエリはジェスアットという修道会で,両者は数学に関する姿勢が根本的に違っていたのだ。

著者

Amir Alexander

カリフォルニア大学ロサンゼルス校の准教授で,専門は数学史。著書に「Geometrical Landscapes: The Voyages of Discovery and the Trans-formation of Mathematical Practice」(スタンフォード大学出版局,2002年),「Duel at Dawn: Heroes, Martyrs, and the Rise of Modern Mathe-matics」(ハーバード大学出版局,2010年)などがある。

監修 足立恒雄(あだち・のりお)
早稲田大学名誉教授。専門は代数的整数論,数学史。
本記事のもととなった 「Infinitesimal: How a Dangerous Mathematical Theory Shaped the Modern World」は足立氏の翻訳により『無限小─世界を変えた数学の危険思想』(仮題)として岩波書店から2015年春に刊行の予定。

原題名

The Secret Spiritual History of Calculus(SCIENTIFIC AMERICAN April 2014)

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