日経サイエンス  2014年4月号

特集:標準モデルのほころび

ミュー粒子に表れた矛盾

中島林彦(編集部) 協力:齊藤直人(高エネルギー加速器研究機構/J-PARCセンター) 森 俊則(東京大学)

 何かおかしい,実験値が理論値と違っている,理論ではあり得ない現象が起きている──。物理学の革新は時に実験と理論とのズレや実験どうしの間の矛盾が端緒となって起きる。K中間子という粒子の崩壊実験で判明した,物質粒子と反物質粒子の振る舞いの違い「CP対称性の破れ」は代表的な例で,1964年当時,世界の物理学者に衝撃を与えた。
 そして今,多くの研究者が「何か変だ」と考えている実験結果が2つあり,いずれもミュー粒子(ミューオン)にからむ。質量が電子の約200倍大きい以外は電子とうり二つの素粒子だ。ミュー粒子にまつわる実験に表れたズレや矛盾の背後には,現在の素粒子物理学の枠組みである「標準モデル」では説明がつかない物理現象が潜んでいる可能性がある。この謎を深く探る実験プロジェクトが,茨城県東海村にある大強度陽子加速器施設J-PARCなどで進んでいる。

 

 

再録:別冊日経サイエンス203「ヒッグスを超えて ポスト標準理論の素粒子物理学」

著者

中島林彦 / 協力:齊藤直人 森 俊則

中島は日経サイエンス編集長。齊藤は高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所教授でJ-PARCセンター副センター長を兼務。g−2/EDM実験を主導している。森は東京大学素粒子物理国際研究センター教授でMEG実験の代表者。

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