日経サイエンス  2014年3月号

グーグル効果 ネットが変える脳

D. M. ウェグナー(ハーバード大学) A. F. ウォード(コロラド大学ボールダー校)

 かつて人々は仲間内で「記憶」という作業を分担していた。夫は妻にレストランの名前を,妻は夫にその行き方を尋ねる。職場でパソコンの調子がおかしくなったら花子に,英語の資料でわからないところは太郎に聞く。記憶の一部を身近な誰かに委ねることで,全体として記憶できる情報を増やしていた。だが近年,そうした「交換記憶」パートナーは,身近な人間からインターネットに変わった。ちょっと面倒なことを知りたいときは,パートナーや友人ではなくネットを頼るようになった。このことは,私たちに想像を超えた影響を及ぼし始めている。どうやら私たちは,インターネットの情報を自分自身の脳の中の知識だと思ってしまうらしい。

 

 

再録:別冊日経サイエンス224「最新科学が解き明かす脳と心」

 

著者

Daniel. M. Wegner / Adrian F. Ward

ウェグナーはハーバード大学のウィリアム・ジェームス記念ジョン・リンズリー心理学教授。交換記憶と思考抑制などについて研究した。闘病の末,2013年7月に亡くなったが「彼の思い出は,心理科学への広範で創造的な貢献の中だけでなく,彼が研究から得た明らかな喜び(それは彼の学生たちに伝えられた)とともに,彼の著作の中にも生き続けるだろう」とアメリカ心理学協会は述べた。ウォードはウェグナーのもと,ハーバード大学で心理学のPh. D.を取得。博士論文では,人々がどのようにインターネットと自己の間の境界を曖昧にしてしまうかに着目した。現在はコロラド大学ボールダー校の上席研究員。

原題名

How Google Is Changing Your Brain(SCIENTIFIC AMERICAN December 2013)

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交換記憶ストループ課題