日経サイエンス  2014年1月号

特集:量子世界の弱値

光子は未来を知っている

語り:Y. アハラノフ(チャプマン大学) 聞き手:古田彩(編集部)

 量子力学は気まぐれだ。全く同じ粒子を用意し,まったく同じ装置で同じように測定しても,結果は様々にばらつく。どの結果が出てくるかを予想することはできない。だが実は「個々の粒子は,未来において自身にどのような測定がなされるかをすでに知っている」。そしてそれに合わせて,自らの量子状態を準備している。私はそれを今知ることはできないが,未来においてある特定の測定をした時にのみ,遡って見いだすことができる──。

 

 測定前の粒子の物理量を問うのは,長らく量子力学では禁じ手とされてきたが,敢えてそこに切り込んだ。弱値とは何を語るのか。物理的にどんな意味があるのか。弱測定の本質は何か。提唱後25年を経て近年注目を集め始め,議論を呼んでいる「弱値」の提唱者アハラノフ教授に,弱値の意味合いと発想の経緯を聞いた。

 

 

再録:別冊日経サイエンス199「量子の逆説」

Yakir Aharonov / 古田彩(ふるた・あや)
 アハラノフ(Yakir Aharonov)は1932年イスラエル生まれ。子どものころはよく周囲の人に「何か問題出して」と挑戦していたという。ヴァイオリンに熱中し,音楽家になろうと考えていた時期もある。1960年にブリストル大学でPh.D.取得。1967年からイスラエルのテルアビブ大学教授(現在は名誉教授)。並行してイェシーバー大学教授,サウスカロライナ大学教授を歴任した。2008年から米チャプマン大学教授。ウォルフ賞,アメリカ国家科学賞など受賞多数。チェスの名手としても知られる。  古田彩は本誌編集部。

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