日経サイエンス  2013年5月号

記憶の引き出し「コンセプト細胞」

R. キアン=キローガ(英レスター大学) I. フリード(カリフォルニア大学ロサンゼルス校) C. コッホ(カリフォルニア工科大学)

 私たちの脳細胞のうち1万個くらいは,例えば「綾瀬はるか」に反応するらしい。その細胞集団は,テレビで話している彼女を見ても,雑誌のグラビアを眺めても,友達が「綾瀬はるか」と言っても反応する。特定の画像や音ではなく,「綾瀬はるか」というコンセプトに反応しているのだ。私たちの記憶は,こうしたコンセプトを格納する多数の引き出しによって作られているようだ。綾瀬はるかのコンセプト細胞の一部は,おそらく「大河ドラマ」や「夕食後のテレビ」などのコンセプトにも反応するだろう。そうやって脳は異なるコンセプトを関連づけている。目や耳がとらえた膨大な情報から意味のあるものだけをうまく記憶する,うまいやり方だ。

 

 翻訳はスタンフォード大学心理学科の竹村浩昌氏。

 
 
再録:別冊日経サイエンス207「心を探る 記憶と知覚の脳科学」

著者

Rodrigo Quian Quiroga / Itzhak Fried / Christof Koch

キアン=キローガは英レスター大学の教授で生物工学研究グループ長。最近,「Borges and Memory: Encounters with the Human Brain」(MIT出版,2012年)を出版した。フリードはカリフォルニ ア大学ロサンゼルス校の脳神経外科教授でてんかん手術プログラムのディレクター。テルアビブ大学のテルアビブ・ソウラスキー医療センター教授を兼任する。コッホはカリフォルニア工科大学で認知・行動生物学の教授を務めており,シアトルにあるアレン脳科学研究所の最高科学責任者。

原題名

Brain Cells for Grandmother(SCIENTIFIC AMERICAN February 2013)

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