日経サイエンス  2013年5月号

フロントランナー 挑む 第26回

アジアの化石に人類の進化を探る:海部陽介

内村直之(科学ジャーナリスト)

 

かつて各地にすんでいた原人はどのように生き延びたのか
その後アフリカに生まれた新人はどう世界に広がったのか
アジアに眠る化石から人類の歴史を掘り起こす

 

 

インドネシア東部のフローレス島のリャン・ブア洞窟からとんでもないものが掘り出されたのは,2003年8月だった。ヒトの骨の一部で,頭はグレープフルーツ大,身長は1mそこそこ。ファンタジー『指輪物語』に登場する小人族になぞらえて「ホビットの出現」とも呼ばれた小さな頭骨の発見は,それまでの人類学の常識を覆した。

「初めて見たときはなんだかわからなかった。発表されたときのインパクトはすごかった」。チンパンジー並みの小さな脳しか入らないその頭骨の模型を手にして,国立科学博物館の海部陽介は振り返る。海部は数々の謎を秘めた我ら以外の人類のひとり,フローレス原人(ホモ・フロレシエンシス)の人類進化における位置づけを明らかにした。 (文中敬称略)

 

 
再録:「フロントランナー 挑戦する科学者」

海部陽介(かいふ・ようすけ)
国立科学博物館人類研究部 研究主幹。1969年東京都生まれ。92年東京大学理学部生物学科(人類学専攻)卒業。95年同大学院理学系研究科博士課程を中退し,国立科学博物館人類研究部研究員となる。99年に東京大学から博士号取得。2007年に東大准教授を併任,現在に至る。08年に国立科学博物館の研究主幹。「アジアにおける人類の進化・拡散史の研究」で12年度の日本学術振興会賞を受賞。

サイト内の関連記事を読む

キーワードをGoogleで検索する

フローレス原人ジャワ原人