日経サイエンス  2013年2月号

特集:温暖化-揺らぐ常識

温暖化で寒くなる冬

C. H. グリーン(コーネル大学)

この3年ほど,北米と欧州を強烈な寒波が襲っている。日本も今年の冬は寒くなりそうだ。地球温暖化が進んでいるなかで,なぜ毎年のように厳しい寒さが北半球の大都市を見舞っているのか。その秘密は,夏の北極域にあるらしい。

 北半球の冬の気候を大きく左右する振動現象として,北極振動(AO)や北大西洋振動(NAO)が知られている。いずれも特定の地域の冬の大気の異常の度合いを示し,AOやNAOの指数が負の値を取ると,北極の冷たい空気が中緯度地方に流れ出しやすくなり,寒い冬となる。

 北極で夏の海氷が少なくなると,大気の状態はこのようなパターンを取りやすい。北極海の夏の海氷面積は,2012年9月には340万平方kmと観測が始まって以来最小となった。北極域で進む急速な温暖化が,厳しい冬をもたらすという逆説的な現象は今後も繰り返される可能性が高い。

 

 

再録:別冊日経サイエンス198「激変する気候」

著者

Charles H. Greene

コーネル大学教授で,地球・大気科学が専門。同大学の海洋資源・生態学プログラムのディレクター,デビッド・R・アトキンソン持続可能な未来センターのフェローを務める。同大の持続可能な地球・エネルギー・環境システムの教育プログラムの責任者でもある。

原題名

The Winters of Our Discontent(SCIENTIFIC AMERICAN December 2012)

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